卒論の「実験方法」の書き方、例について。
卒業論文を書く際、「実験方法(研究方法)」の部分は非常に重要です。このセクションでは、どのようにデータを収集・分析するのか を明確に説明し、論文の信頼性を高める役割を果たします。しかし、適切に書かないと「研究の意図が伝わらない」「再現性がない」などの問題が生じることがあります。
本記事では、卒論における「実験方法」の基本構成や書き方のポイント、具体例を交えながら解説します。
1. 実験方法(研究方法)の役割とは?
実験方法(研究方法)のセクションでは、「どのようにデータを収集・分析し、研究課題にアプローチするのか」 を説明します。読者(査読者や指導教員)が研究の再現性を確保できるよう、明確かつ詳細に記述する ことが求められます。
基本的には、以下のポイントを押さえて書くとよいでしょう。
✅ 実験方法の基本構成
研究対象・データの概要(何を対象に研究するのか?)
実験・調査の手順(どのような方法でデータを取得するのか?)
使用する機器・ツール(どんな機器やソフトウェアを用いたのか?)
データ分析方法(どのようにデータを処理し、解析するのか?)
実験環境の条件(特別な環境や制約があれば明記する)
この構成に従って記述することで、読みやすく整理された「実験方法」セクションになります。
2. 実験方法の具体的な書き方(テンプレート)
以下のテンプレートを活用すると、スムーズに書けます。
① 研究対象・データの概要
例(心理学実験の場合):
「本研究では、大学生50名(男性25名、女性25名)を対象に、視覚刺激が記憶に与える影響を調査した。」
例(物理実験の場合):
「実験では、純水100mLに対して異なる濃度の塩化ナトリウム溶液を用い、電気伝導率の変化を測定した。」
研究対象やデータの概要を明確にすることで、どんなサンプルを用いたのか が伝わりやすくなります。
② 実験・調査の手順
例(心理学実験):
「被験者は、コンピューター画面にランダムに表示される単語リスト(50語)を5秒間閲覧し、その後30秒の休憩を挟んで記憶テストを受けた。」
例(物理実験):
「まず、50℃に温めた水に対し、0.1M、0.5M、1.0Mの塩化ナトリウム溶液を添加し、溶液の温度変化を測定した。」
実験の流れを順序立てて記述すると、他の研究者が同じ実験を再現できるようになります。
③ 使用する機器・ツール
例(心理学実験):
「本実験では、刺激提示に使用するコンピューター(Dell XPS 15, Windows 11)および、データ収集用のソフトウェア(E-Prime 3.0)を用いた。」
例(物理実験):
「電気伝導率の測定には、デジタル導電率計(Horiba B-771)を使用した。」
機器やツールを具体的に記述することで、研究の再現性が向上します。
④ データ分析方法
例(心理学実験):
「データ分析には、SPSSを用いて記憶テストの正答率を算出し、対応のあるt検定を行った。」
例(物理実験):
「各濃度における電気伝導率の平均値を求め、線形回帰分析を行った。」
データ分析方法を明記することで、研究結果の正当性を示すことができます。
⑤ 実験環境の条件(必要に応じて記述)
例(心理学実験):
「実験は、外部からの音が遮断された実験室(温度22℃, 照度300lx)で実施した。」
例(物理実験):
「全ての測定は室温(25℃, 湿度40%)の環境下で行った。」
実験の信頼性を担保するため、環境条件が結果に影響する場合は明記 しましょう。
3. 「実験方法」を書く際の注意点
❌ 冗長になりすぎない
→ 実験手順を細かく書きすぎると、冗長になってしまいます。「必要な情報だけを簡潔に記述する」ことを意識しましょう。
悪い例:
「まずパソコンの電源を入れ、ログイン後にE-Primeを起動し、実験用プログラムを選択した。」
良い例:
「E-Primeを用いて刺激提示を行った。」
❌ 曖昧な表現を避ける
→ 「たくさん」「適当に」「少し」などの曖昧な表現は避け、具体的な数値や条件を明記 しましょう。
悪い例:
「被験者に単語をしばらく見せた後、記憶テストを行った。」
良い例:
「被験者に単語リスト(50語)を5秒間提示し、30秒の休憩を挟んで記憶テストを実施した。」
❌ 他の研究との比較がない
→ 「なぜこの方法を採用したのか」 の説明がないと、研究の意義が伝わりにくくなります。
例(改善版):
「従来の研究ではA法が用いられてきたが、本研究ではB法を採用し、より精度の高いデータを取得できるようにした。」
4. まとめ:実験方法を適切に書くために
実験方法を書く際には、以下のポイントを押さえましょう。
✅ 研究対象やデータを明確にする(例:被験者数、サンプル数)
✅ 実験・調査の手順を論理的に説明する
✅ 使用した機器やツールを具体的に記述する
✅ データ分析の方法を明示する(統計手法、解析方法)
✅ 必要に応じて実験環境の条件を記載する
これらを意識すれば、論理的でわかりやすい「実験方法」セクションが書けるはずです。しっかりと準備して、説得力のある卒論を書き上げましょう!